刑務所の中はどうなっているのだろう。興味を持ちながら、今まで一度も足を踏み入れる機会がなかった。府中市がふるさと納税の返礼品として、府中刑務所の中を案内する「プリズンツアー」をすると聞き、同行取材した。7月下旬、ツアーに参加し、受刑者の暮らしぶりや刑務所の取り組みを見せてもらった。
JR武蔵野線の北府中駅を下り、美術館通りを東に歩いていくと、左手に塀がみえてきた。中にあるのは、団地のような建物。刑務官と家族が生活する官舎だ。何かあれば、すぐ対応しなければいけないから、敷地内で暮らしているそうだ。
強い日差しが照りつけるなか、汗だくになって正面玄関にたどりついた。それもそのはず、府中刑務所は東京ドーム5.6個分の26万平方メートルで、全国の刑務所で最も大きい。収容定員は2668人。現在、日本人が約1300人、50カ国余りの外国人約360人が収容されていて、収容率は6割だ。身体や精神疾患のある受刑者を受け入れる医療重点施設でもある。
最高齢は94歳 受刑者のおむつをかえる刑務官も
「刑務所は、日本の縮図ですよ」と、案内してくれた林豊調査官(52)は話す。高齢化が進み、20年前に1割に満たなかった65歳以上の受刑者が今では2割に。最高齢は日本人は94歳、外国人では78歳だ。介護が必要な人も少なくなく、受刑者のおむつを刑務官が替えることもあるという。天涯孤独で住む場所もなく、生活のために犯罪を繰り返す高齢者もいるという。
最初に通された広い部屋には、自転車型トレーニングマシンをこいでいる高齢者がいた。お手玉を次から次へと、遠くにある台の上に投げている人や、「脳トレ」をしている受刑者もいた。お手玉を投げるのは、体のバランス感覚を養うため、脳トレは認知機能を高めるためだという。
受刑者は日中、革製品や家具、印刷物、自動車整備などの工場で作業をするのが決まりだ。以前は、高齢で体が動かなくなった人は作業をせずに居室にとどまっていた。
作業療法士の指導で機能訓練も
ただ、それでは出所した時に社会復帰が難しくなると、2021年に変えた。作業療法士の指導を受けながら、認知機能や身体機能を高める訓練をすることにした。見学に行った日も、作業が少しできるようになった高齢の受刑者が、洗濯ばさみを組み立てていた。
受刑者が介護訓練 資格をとり他の受刑者の指導も
「これではだめ。もっと水をためてから、こうやって流して」。ある受刑者が、介護福祉士の指導のもと、車いすに乗った男性の髪をシャワーで洗い流していた。介護をする訓練だ。介護職員実務者の研修を受けて資格を取り、ほかの受刑者の指導をしている人もいた。
外に出て、「晴見自動車整備…